【 おぼろいなり寿司 について 】 



取りかかった頃は、『豪勢ないなり寿司』からでした。

一般的な『いなり寿司』は、ゴマとシャリを味付けした
油あげに詰め込んだものです。
当店でも従来のいなり寿司はそうでした。


この中身を豪勢にすれば旨いはず!と思い、エビを
入れたりウナギを入れたり、あらゆる具材を入れては
試食する毎日。毎日、いなりの試食ばかりでした。


しかし、中身の具材の味が油あげの甘みに消されて
しまうんですね。どうしても甘みに負けてしまうのです。
 

寿司屋で『いなり寿司』というのは脇役ですが、巻寿司や
いなり寿司は店の味を表すものです。
既製品を使っているのか、手作りの仕事をしているのか、
食べれば一目瞭然です。

特に脇役である『いなり寿司』は手間がかかるので作られていない寿司屋さんも多く、既製品のあげを使われているところも結構あります。

そんな脇役を ”主役になりうるいなり寿司を作ろう!”
が始まりでした。
 





  試作と試食を繰り返し、夫婦で試行錯誤しながら辿りついたのが”いなり寿司本来のシンプルながら温かみのある手作り感”でした。

甘味のある油あげに相性の良い干瓢と煮椎茸を加え、煎りゴマと擦りゴマをオボロ昆布で巻いたものに決定。

先代の女将から受け継いだ味付けで包みこんだ新しい
いなり寿司の原型が完成しました。

が、何か足りない!何かアクセントが欲しい!

ここから”アクセントになる何か”探しが始まります。


色々なことを考え、試す期間が暫く続いていた時に
家内が 「三つ葉を加えてみればどう?」

香りと食感が新たに加わり 『これはイケる!』

こうして新感覚のいなり寿司が誕生したのです。



新しい『いなり寿司』が出来てから気づきました。
自分では満足のゆくものが出来たつもりでしたが、逆に
 
 『食べる側(お客さん)はどう思うだろ?』
 『このいなり寿司を美味しいと思うだろうか?』


単に自己満足だけかもしれない。

何カ月もかけて試行錯誤してきた思い入れのあるもの。

この『いなり寿司』はお客さんに受け入れて貰えるように
食べる側の意見や感想を最大限に反映しようと思い、
アンケートを作成し、意見を伺うことにしました。

試食アンケートではお客さんの率直な意見や感想を
得る為、無記名でのアンケートを実施。

20代から70代まで幅広い層の方々から貴重な結果を
得ることが出来たのです。

 「もう少しボリューム感があったほうが良いのでは」
 「もっとゴマを増やして欲しい」 等々。

それらの貴重な意見を参考に更に食べる側の要望に
耳を傾けて改良を繰り返していったのです。

回答頂いた多数のアンケートの結果、この『いなり寿司』
の名前を 『おぼろいなり』 と名付けました。

価格は1個 100円というのが一番多かった値段です。


『お客さんの最大公約数の意見を尊重したものにしたい』

という当初の思いから、当面の間は実際の販売価格を

       1個 90円 とします。


多くの貴重な意見や要望から生まれた『おぼろいなり』

是非とも一度、ご賞味ください。
                           店主